
ーーー今回のリニューアルを機に、ロゴが「ぱんと黒ねこ」に一新されました。人気ベーカリーのロゴに突然、ねこが登場した理由を教えてください。
中野さん: 実はこのねこ「突然」登場したわけではなく、開店当時から、デザインの要所要所で使用していたイメージだったんです。こちらはYukinko Bakery & Cafeさんで毎年12月に開催しているナイトカフェというイベントのDMなのですが、ご覧の通り、黒ねこのイメージ、イラストが毎年必ずどこかに入っているんですよ。

写真ではわかりにくいが、1年目のDMから既に小さく入っていた黒ねこ。年を重ねるごとに、だんだんその存在感も大きくなっていきました。
ーーーあっ!! 本当だ! 中野さんとYukinko Bakery & Cafe さんはオープン当初からのおつきあいなんですね。
中野さん: 7年前共通の知人からご紹介いただき、ロゴの制作をしたのがゆきんこベーカリーさんとの出会いでした。当初いただいたキーワードは「北欧」。あとは中野さんの好きにデザインしてくださいと言われて。北欧のイメージをどう伝えるか。オーナーのゆきこちゃんの柔らかい、ゆるい感じをイラストとロゴのグラフィックで全部表現したくて。

ーーーなぜ猫なんですか?
中野さん: 物語を感じさせたかった。北欧の街並み。そこにできた新しいベーカリー。サザエさんじゃないけれど、その店のパンをくわえて一匹のねこが石畳の道の上を走っていく。そんな物語を考えて楽しんでいたんです。ぼくは北欧に行ったこともないし、勝手な想像なんだけど、石畳を走る黒猫のイメージは、グラフィックでも表現しやすいし、美しいなと。
リニューアル。いよいよ登場「ぱんと黒ねこ」
中野: でも、最初のうちは目立たないように、ひっそりとだいぶ抑えて登場させていました。
ーーーなぜ最初は抑えていたのでしょうか。
中野さん: こちらの主張をしすぎるのもよくないし、威圧的にデザインはこうだ!とクライアントに言うのもあまり好きじゃない。だから、ちょっとずつ馴染ませていくというか。リサ・ラーソンのねこの置物をプレゼントしたり、少しずつ、コツコツと店内のねこの存在感を高めていきました(笑)。

ーーー涙ぐましい努力ですね(笑)中野さんご自身はねこが好きなんですか。
中野さん: はい。キャラじゃないのであまり公言してませんけど(笑)ねこは好きですし、事務所と自宅、それぞれで飼っています。
ーーーそして、いよいよ、2017年にお店がリニューアル。ロゴデザインも一新されました。
中野さん: ナイトカフェのDMご覧いただいてもお分かりの通り、5年目あたりから、もう我慢ができなくなって(笑)。ゆきこちゃんに「ねこ、出していい?」って。フランスパンは特徴的でそれ自体とてもおもしろい形だし、リニューアルでは店舗の内装デザインもさせていただいたので、せっかくならここですべてを統一して表現したいと思い、「ぱんと黒ねこ」のロゴになりました。
ーーー箔押しの金色フランスパンに、ねこがひょっと顔を出すデザインが、とてもかわいいですよね。首が長かったり、しっぽが長かったりしますが、これには何か理由があるのでしょうか。
中野さん: 置物にもなったらいいなとか、ゆくゆくのことも考えてはいますが、まずはインパクトですよね。
ーーーでも、あまり押し付けがましくないというか、さりげない感じですよね。背景が見えるというか、後景から入ってくる感じというか。ねこだけでなく、そこの街並みから確かに物語を感じます。
中野さん: 最初は抑えていて、少しずつ存在感を出していったので、そのクレッシェンド効果もあると思います。今後の物語も想像しながら、この黒ねこの行き先をぼく自身とても楽しんでいます。
インタビューも終え、最後にYukinko Bakery & Cafe の大人気メニュー、クロックマダムをいただきました。食パンに自家製のホワイトソース、ハム、ホワイトソース、チーズ、半熟たまごを重ねた、シンプルだけど贅沢なクロックマダムを食べながら。7年かけてじわじわと、今ではお店の欠かせない顔になった黒ねこの物語に思いをはせるのでした。

(写真:あえか)
Yukinko Bakery & cafe
電 話 088-678-5787
住 所 徳島市北矢三町3-6-20グランディール矢三C1F
アクセス JR蔵本駅から徒歩7分