『必死すぎるネコ』著者の沖昌之さんインタビュー:後編

お待たせしました! 先日お届けした『必死すぎるネコ』著者の沖昌之さんへのインタビューの後編をお届けします。今回は沖さんの徳島に対するイメージ、徳島での出会いについてを中心にお伺いしました。

平惣徳島店にて行われたトークイベントの様子。今回の記事はこちらのトークイベントの内容を元に作成しています。

昔は旅行より睡眠だった

ーーー徳島に来られたのは今回がはじめてでしょうか?

沖昌之さん(以下:敬称略): 撮影で来たのははじめてですね。

ーーー徳島に抱いていたイメージと、実際来てみての違いはありますか。

沖: いやあ、イメージは正直なところ、そんなに具体的に持ってなかったというか……。僕は元々全然旅行するタイプじゃないんですよ。カメラを持つようになってから旅行も増えたし、はじめて行く場所も増えたので。それまでは家でいかに多く寝られるか、それしか考えてなかったですね(笑)。

ーーーまさにねこタイプの(笑)。

沖: そう、ダメな部類の(笑)。あ、徳島は食べ物がおいしいですね。それに人も本当に優しい。こんなおっさんがカメラをぶら下げて、昼間からねこの写真撮ってたらふつう不審がると思ったんですけど、もう全然。「ここ前に岩合さん来てたんだよー」とか、「あそこにもねこおるよー」って教えてくれる。しまいにはここは「ゆずが有名だから」って『ゆずゴマ』というドレッシングを教えてくれて。めっちゃおいしいから今度持ってくる!って言われたんですね。その方が本当にドレッシングを持ってきてくれたんですけど、タイミング悪く、僕がちょうどご飯食べに出かけてて。そのおじさんも「もう帰ったのだろう」と思って『ごまドレ』を自分の家に持って帰ったそうなんです。で、そのあとに、漁港でまた僕と鉢合わせ。「お前まだおったんで!」って(笑)。そしたら、わざわざまた家までドレッシングを取りに戻ってくれたんですよ。で、その『ゆずゴマ』をここ(手の甲)に付けてくれた。なめてみたら、もうめっちゃおいしくて。ほんとなんだこれって。ぼくは感動しましたけど、そのおじさんからしたら、何の得があるんやろって思いますよ(笑)。

ーーーなかなかレアな方に出会いましたね(笑)。

沖: いや、でも、今回の徳島の旅で出会った方、みんな優しかったですよ。泊まってた民宿も、牟岐の『杉本』さんって言うんですけど、ご飯がめちゃめちゃ多くて。晩御飯に3食分くらいの量が出る(笑)。おかずだけじゃなくて、お米もおひつにいっぱい。

ーーー息子が帰ってきた、くらいのおもてなしを受けたわけですね(笑)。

沖: いやー、でも変な人やなーと思ってたと思いますよ。口を開けば「ねこ撮りに行ってきます」しか言わないんで(笑)。今回の『必死すぎるネコ』を宿のお母さんにお渡しした時も「いやー私ワンちゃん派だから」とか「娘もねこアレルギーで……」って。「有難く頂戴するわね」とは言ってくれたんですけどね。で、あ、これは失敗したかな、と思ってたら、翌朝娘さんが「サイン欲しい」とおっしゃって。お父さんにも「すごい人(糸井重里氏)に帯書いてもらってるねー」と言われましたね。糸井さんのおかげで『ねこばっか撮ってる変な人だけど、悪い人じゃない』ということを理解してもらえたと思います。

ねこは感情表現が豊かで、人間っぽい

ーーー今更な質問なのですが、沖先生の思うねこの魅力、他の動物との違いはなんでしょうか?

沖: 他の動物をじっくり見たことがないので、それが正論なのかはわからないんですけど、カメラを構えるまでは、ねこってクールで、人に媚びなくって、一日中寝てて、毛繕いして、で、また寝てみたいな。全然動かなくて、感情もまったく出ない動物だと思いこんでいて。でもいざ撮ってみると、びっくりするくらい喜怒哀楽があるし、それが顔にも出るし、態度にも出るし、しっぽにも出るし、耳にも出るじゃないですか。

怒ってるときは顔の形相変わるし、耳もピーンとなる。かと思えばデレデレのときなんかお腹みせてゴロンゴロンするじゃないですか。スリスリしてきたりとか。それがすごいなーって。こんなに感情出すんだって。

それぞれ性格も豊かで、なでられるところも(好みが)全然違うじゃないですか。一匹は顔をなでられてすごく喜ぶけど、別の一匹は顔をなでられた瞬間に手が出る、でもお尻はアリ!みたいな(笑)。

そういうのが人っぽくて楽しいなーと思いながら撮ってるので、そういうものが撮れたらいいなと思う。僕にとってのねこの魅力は、感情表現の豊かさ。そういうところかなあと。

あえて『相手にしたくない』というセレクト

沖: あともう一つ気付いたのは、ねこって『我関せず』な生き物だと思ってたんですけど、実際は目から情報をたくさんインプットしているし、耳も頻繁に動いて音を拾ってる。後ろ向いてるからって、聴いてないわけではないんですよね。顔はこっちを向いていなくても、誰が来たかのか気づいてると思うんです。いつもご飯をくれる人の自転車の音とか、鳴らしているラジオの音で感づいて、しっぽを立ててニャーニャー鳴いてご飯を待っているんですよね。

それだけいろんな情報を得ていながら、あえて『相手にしたくない』というセレクトをしている。ねこってすっごく頭のいい生き物なんです。撮影する中で、そのことに気づきましたね。

もし今の仕事をしていなかったら

ーーーもし今のお仕事をしていなかったら、どんな仕事をされていたと思いますか?

沖: 前に勤めてたアパレルでそのまま機嫌よく仕事してたと思います。本当にその『ぶさにゃん先輩』に出会ってから人生が変わったので。それまで写真は趣味で撮ってたくらい。友達に冗談で「カメラマンになりたいの?」とか言われても「いやさすがにそれは無理だろうし、なりたいとも思ってないんだよね」とは話してました。

さかのぼれば、子供のときはカメラに撮られるのも嫌いだったので。僕自身、自分にそんなに期待してなかったので、平々凡々な人生で、まして新聞に名前が載るようなこともないし、本を出すこともないし、こうしてお呼ばれすることも思ってもみなかったですし。新聞に名前が載ることがあったら、変わった死に方したりだとか、なにか事件起こしたりだろうなくらいにしか(笑)。

ーーー 一同(笑)。

沖: それぐらい自分に価値も、期待もなかった。だから(写真家になっていなかったら)そのままアパレルで普通に仕事していたと思う。

カメラにしたって元々その婦人服屋さんの社長がカメラに強くて。その人はブログでビジネスもやってた人なので「商品写真はクオリティが高くないとダメだ」と。そこで写真撮影という業務をいただいて。僕のSNSのアカウント名「okirakuok」iも、ブログを開設した時に会社の方につけていただいたものなんですけど、要するにそれくらい「お気楽」と思われていた(笑)。

それがこうやって今があるのは前職との出会いがあったからなんです。そのアパレル店がなければ休憩時間にぶさにゃん先輩と出会うこともなかったし、すべて自分以外の力に導かれてるだけだと本当に思いますね。

 徳島のとっておきのねこスポットに時間をかけて通ってみたい

ーーー最後に、徳島のねこ好きの皆さんに何かメッセージを!

沖: また難しいことを(笑)。

ーーーすみません(笑)。

沖: 僕の知らない徳島の、地元の人しか知らないねこ、たくさんいそうな気がして。またそういうねこを撮りに来る機会があればいいなって。きっとまだ、とっておきのスポットがあると思うんですよね。そういうところに時間をかけて通えたらいいなって。……これは、徳島の人に向けてになってるのかな(笑)。それお前の気持ちだけじゃんってなってません(笑)?

ーーー(笑)。逆に徳島の人間としてはそう言ってもらえてすごくうれしいです!

沖: あ、でも!徳島ってすっごくねこ愛が強いらしいですね。前にねこのイベントを競艇場かなんかでやられてたみたいで。

ーーーはい、ねこねこフェスティバルですね。

沖: それも6,500人くらい人が来たんですよね。

ーーーねこねこフェスティバルが開催された鳴門市は人口が6万5千人もいるんですが、その10分の一が来たという(笑)。市長がねこ好きで、ねこを7匹飼っているんです。

沖: あ、そうなんだ! すごいですね。是非一緒にお仕事したいって言っておいてください(笑)。

ーーー 一同(笑)

沖: 『ししゃもねこ』もそうですけど、やっぱりねこ好きなんでしょうね。徳島にはねこ愛を強く感じます。

後半では徳島を褒めてもらって終始上機嫌のほにゃけん編集部一同でした。沖先生はすごくサービス精神が旺盛な方で、先生の方からどんどん話してくれ、先生の優しさとねこに対する愛を感じました。

そして徳島に住んでいながら知らなかった『ゆずゴマ』が今めちゃくちゃ気になっています!!

最近7刷目も決定し、留まることの知らない『必死すぎるネコ』人気。あなたの生活に、ゆとりと笑いを必ずもたらしてくれる、マストな一冊です!!

沖昌之(おきまさゆき)

写真家。1978年兵庫県生まれ。「必死すぎるネコ」「ネコザイル」「無重力猫」など、独自の視点でネコを撮影し発表する。写真集「ぶさにゃん」(新潮社)、写真提供「ネコになってしまえばいい」(心屋仁之助・著/廣済堂出版)、「好きな男を手に入れたければ、ネコ系女子になりなさい。」(沖川東横・監修/辰巳出版)など多数。猫専門誌「猫びより」(辰巳出版)にて「必死すぎるネコ」連載中。4月23日よりAERAに連載予定。

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