【猫の日特集】『必死すぎるネコ』著者の沖昌之さん独占インタビュー 〜必死すぎるネコへの近づきかた

ねこねこブックレビュー【10】『必死すぎるネコ』沖昌之 / 辰巳出版

2018.02.20
今、巷のねこ好きに大人気の一冊と言えばこれ。『必死すぎるネコ』。タイトル通り、何かに必死になりすぎちゃったねこたちの、かわいい姿だけを集めた写真集です。このたび、ほにゃけんでは著者であり、フォトグラファーの沖昌之さんに単独インタビューをさせていただきました! ねこを撮るフォトグラファーになったきっかけ、徳島や台湾でのねことの出会い、そして誰もが気になる「必死すぎるネコ」の撮り方、警戒心の強いねこに近づく方法など、えー!そこまで聞いちゃっていいのーっ!?ってところまで、とことんお聞きしました。2月22日は「ねこの日」記念、スペシャルインタビューをご覧ください。

『必死すぎるネコ』沖昌之(辰巳出版)

 

ねこも人間と同じ。いろんな性格があるんですよね。

平惣 徳島店にて行われたトークショー後に。中心が沖昌之さん。

———写真集『必死すぎるネコ』すごく面白かったです! 突然なのですが、先日都内で個展を開催されたそうで。その際に沖さん本人が写真の解説をされていたとお聞きしました。インタビューと言いながらいきなり個人的なお願いで恐縮なのですが、私が一番好きな一枚(カモが水面をバタバタしていて、起こった水しぶきに陸の猫が目を細めている写真)を、沖さんから是非直接解説していただきたいなと……(笑)。

沖昌之さん(以下敬称略): 個人的なリクエストから入るインタビューですね(笑)。わかりました。ぼくが撮影しているねこスポットの1つ、人工的な池があって。カモだと思うんですけど 春ごろに飛んでくるんです。そのカモをいつも2匹くらいのねこが狙っているのですが。これはそのうち、ねこがカモを捕まえるか、捕まえようとして逃げられるシーンが絶対撮れるんじゃないかと思って。この写真の子自体は以前からかなりシャッターチャンスを狙っていたんですよ。カモも頭がいいので、簡単には捕まえられたりしないと思うし、捕まえようとして、この子も水に飛び込むんじゃないかなって。そうしたら案の定、捕まえようとして逃げられて、かえり水をバシャーとかけられている写真が撮れたと。この猫もすごくバツが悪そうな顔で。

———なんともいえない顔をしていますよね(笑)。

沖: 「なんでオレ、水かけられてんねやろ」みたいな(笑)。この写真、これはこの瞬間がくるのをずっと待ってましたね。

———沖さんは普段「この猫ならなにかやってくれる」、そういう期待を持って猫を見られているんですかね。

沖: うーん……。どうだろう。ねこもそれぞれ性格があるんですよね。人間もそうじゃないですか。人前で喋るのが好きな子もいるし、逆に裏方が好きな子もいる。ねこも同じなんですよね。アグレッシブに、大人になっても子ども心が旺盛な子もいるし、年取って動かない子もいるし。人に対してはすごく積極的だけど、他の子には関わらないとか。本当、いろいろな性格があるんですけど、その中でも一番動きがあるのが、子猫、あるいは子ども心のある大人のねこ。そういったねこにやっぱり自然とカメラが向いてしまうというのはありますね。

「キーパーソン」ぶさにゃん先輩との出会い

———沖さんがねこを撮りはじめたきっかけは、ねこの性格の多様性や、その面白さ、魅力に惹かれたからなんでしょうか。

沖: いえ、それは全然違います(笑)。

———違うんですね(笑)。

沖: 一匹のねことの出会いがすべてを変えたんですよ。2013年の大晦日だったと思うんですが、それまでぼくはアパレル関係の販売員をしていたんです。その休憩時間に近所の公園に行ったら、ぼくが「ぶさにゃん先輩」と名付けているねこに出会ったんですね。アメリカンショートヘアみたいな柄で、エキゾチックショートヘアみたいな顔の、ちょっとブサカワな子なんですけど。

沖さんの写真集『ぶさにゃん』は、ブサイク顔のねこ写真だけを集めた写真集。(新潮社)

沖: 家ねこの子って、普通、外に出たらストレスであからさまに痩せちゃったりすることが多いんですが、その子はまったくそんなことなくて(笑)。丸々太って機嫌よく公園の真ん中に座ってたんですね。それを見て「すごく自由やなあ」って。それで心惹かれてしまって。翌日、元旦にカメラを持って「あのねこを撮ろう」とその公園に向かった。ぼくのねこ写真生活はそこからスタートしたんです。

もともとぼくはエキゾチックショートヘアの顔ってあんまり好きじゃなくって。ロシアンブルーとか、アビシニアンみたいなキレイ顔の子が好きだったんですけど、その子を初めて見たときに衝撃を受けて、今では「エキゾチックショートが大好き!」ってなっちゃいました(笑)。

———最高の被写体だったんですね。

沖: うん。本当に、この子に出会わなかったら、ねこの写真を一生懸命撮ろうとも思わなかっただろうし、最高の被写体であるとともに、人生の「キーパーソン」って言ったらヘンだけど、この子がチャンスをくれたんだなって思ってます。

遠方に行っても基本ずっとねこを撮ってます

———今回、徳島でのトークイベントがあったのですが、数日前から徳島に来られていたとお聞きしました。それはやっぱり徳島のねこを撮るためにでしょうか?

沖: はい。ほにゃけんさんの記事を拝見して、行きたいねこスポットがあったので。

〜光の中の阿波ねこたち〜県南の港町に暮らすねこ 3

———それは本当に嬉しいです! お目当の子には会えましたか?

沖: はい。昔に比べると数は減ったみたいだけど、それでも十数匹はいましたね。地元の方もねこに対して優しいから、ねこもぼくみたいな一見さんに対しても全然ウエルカムで。すごい人懐っこくて。いい感じの絵が撮れましたよ。『必死すぎるネコ』版元の辰巳出版さんも「徳島のねこマップ」まで作ってくれて。

———お松大権現には行かれましたか?

沖: それが行けてないんですよ!
ぼく、場所を決めると、そこから動けない人なので……。ひたすらそのねこだけしか見てない、っていう過ごし方なので、たぶんはためから見たらダメな人だと思います(笑)。大雨の日があったんですよ。昼時、定食屋さんに入って。肉うどん食べて。それくらいかな。それ以外はずっとねこを撮ってた(笑)。

———狙い撃ちなんですね。

沖: そうですね。その1日だけで、ねこが何してるかってわからないじゃないですか。実はこの子は人見知りなフリして、2日目にはめっちゃデレっちゃう子かもしれない。性格ってあるんですよ。だから、本当は1日だけで答えを出せないんですよね。1週間くらい通ったらもっと違ったものが見えてたかもしれないという。なのでじっくり、一箇所場所を決めて「定点観測」で撮影していくことが多いですね。

CNNが選ぶ「世界6大猫スポット」というものがありまして。その中の一つが台湾にある猴硐(ホウトン)なのですが、そこで写真を撮りたいなと思って。隣町の九份(キュウフン)に泊まって、そこから猴硐まで、1週間くらい。毎日まるで通勤してるみたいに通ってましたね。台湾で「猫夫人」と呼ばれる、ねこの写真家さんがいらっしゃるんですが、その方が台湾を案内してくださった日が1日だけあって。その1日だけは違う場所に行きましたが、それ以外はずっと猴硐と九份と中継地点の瑞芳(ルイファン)だけ。だから、台湾まで行ったのに、台湾は全然満喫せずに、とにかくねこ、ねこ、ねこ(笑)。

———日本と台湾で、ノラちゃんの性格の違いってありますか?

沖: それ、いつも聞かれるんですけど、なかなか明確な違いは見出せないですね。ただ、やっぱり、人間の活動の影響というか、ねこも環境に染まるところはあるかなと。日本だと大通り、車が通ってる通りにねこがいないじゃないですか。でも、台湾って、そういう通りに、ごはん屋さんがあって、屋台がある。で、そのお店の人たちがねこ飼ってたりするんですよね。だから、車がバンバン通ってる中でもねこがいるという。車が走ってるのに、ねこが道路横切っちゃうし、日本よりも「ねこがどこにでもいる」感はありますね。

———おうちで飼われてるねこよりも、ノラのほうが多いんですかね。

沖: そんな気はしますね。日本だと室内飼い推奨だけど、台湾だと外にも出ていいし、飼ってるのか飼ってないのかわからない感じ。

必死すぎるネコへの近づきかた

———ねこが好きでも近づくと逃げられたり、警戒されたりしますよね。ねこ好きの永遠のテーマだと思うんですけど、ねこの警戒心を解くコツ、テクニックはありますか?

沖: でも、ぼくもどちらかというと、警戒心を持たれるし、逃げられるほうだと思うんですよね。ぼくよりもねこに好かれている人をたくさん知ってるし、いつもお会いしているねこがそういう人に、ぼくには見せない表情を見せたりするからジェラシー感じて(笑)「じゃあ、他のスポットに行こう」というときも多々ありますよ。

ただ、ねこって、よく観察している動物だなとは思いますね。「こいつ、よくこの場所に来てるな」とか「はじめてだな」とか、なんとなくうっすら「こいつはねこ好きだな」とか「こいつはねこ嫌いそう」とか。そういう空気感をねこ自身が捉えてる気がするんですよね。ねこが好きなら、通うしかないんだと思います。

今までまったく懐いてくれなかったねこが、何をどうしたのか、2年くらい通ってたら、突然なつきはじめたこともありました。

———に、2年ですか??

沖: はい。だから、ねこなりに何かルールがあるのかなーって。その土地にいる人くらいの勢いで通えばねこも警戒しなくなるのかもしれないですね。だって、地元のおばちゃんが自転車でねこの前通り過ぎても、ねこって逃げないんですよ。あれが謎やなーって思って。でも、ぼくが警戒しながら寄ると、すぐに逃げていってしまう。だから、ねこを意識しすぎるから、ねこもこちらを意識してしまうのかも。ぼくも住人の気持ちになる。「わ!ねこだ!」と思わず、「またねこがいるなー」くらいの感じで、そういうふうに装って、自分が撮りたいポジションまでいって、突然寝転びながら撮り始めると。そうしたら、ねこがアレ?って気づいたときにはもう遅いというか(笑)。地元の人っぽい空気感の演出ですかね。

———なんかその空気の出し方にはコツがあるんですか? 変装していったりとか。

沖: いや、そんなのは全然しないですよ(笑)。ただ、ねこ好きな人って、ねこに出会うと「かわいい!」から始まるから、それが態度に出るじゃないですか。なんか早歩きになっちゃったり、逃げないかなーって必死な表情になっちゃったり。ねこはかわいい、めっちゃかわいいんだけど、そこは自分を無理やり落ち着かせてですね、「ねこ?別にフツーだなー」って心持ちに自分を持ってくしかないです(笑)。

———好きだからこそ気に入らないそぶりをしないと、ってことですね。

沖: 最初にねこに出会ったとき、どうしても嬉しいんですよね。カメラの準備してないから、慌ててカバンを開けたり、動作が早くなると、ねこって怖くて逃げちゃうんですよね。そこを「別に逃げられていいや」くらい、のんびりとカバンを開ける。「興味ないし」というフリをして準備したり。それから撮りますね。

自分がねこだとしたら、人間ってねこにとって、びっくりするくらい大きいものだと思うんですよね。そういう関係だったら怖いじゃないですか。そう思ったらできるかぎり、こちらが動かないようにゆっくりしてあげる。それしかないんだろうなと思います。

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かわいいと思うからこそ、何とも思ってないフリをする。「べ、べ、別にかわいいとか思ってないんだからね!」。ねこを撮影するコツはその「ツンデレ」にありなのかもしれません。なるほどー!

インタビューは後編に続きます。後編もお楽しみに!

沖 昌之(おき まさゆき)

写真家。1978年兵庫県生まれ。「必死すぎるネコ」「ネコザイル」「無重力猫」など、独自の視点でネコを撮影し発表する。写真集「ぶさにゃん」(新潮社)、写真提供「ネコになってしまえばいい」(心屋仁之助・著/廣済堂出版)、「好きな男を手に入れたければ、ネコ系女子になりなさい。」(沖川東横・監修/辰巳出版)など多数。猫専門誌「猫びより」(辰巳出版)にて「必死すぎるネコ」連載中。
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ブログ:野良ねこちゃんねる。


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ほにゃけん

ねこ大好きにゃん集部
ねこのことならなんでも、ゆるーく、ふわーっと追いかけます。ねこ情報、ねこのいるところならどこへでも。ねこにとって、ねこ好きにとって、より心地よい徳島を目指して活動中にゃ〜。